(福岡県)北九州市立西小倉小学校

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【目的・ねらい】

パラリンピック教育を推進していくために,効果的な方策の開発をし,その教育的効果を検証し,授業構想の構築を図る。
①スポーツに対する見方・考え方を広げ,スポーツの多様性等への理解の深まり
②スポーツを「見る」「支える」視点への気付き
③スポーツに対する関心・意欲の高揚

【実践内容等】

(実施内容)
第3学年 体育科「みんなでつなごう ふうせんバレーボール」【総時間数3時間】
ねらい:体育科「ネット型ゲーム」と関連させ,「ふうせんバレーボール」による特別支援学級(わかば学級)との交流学習を行うことを通して,障害がある人を含め多様な人が一緒に取り組めるスポーツを知るとともに,互いが協力してボールをつなぐ楽しさ(ふうせんバレーボールのもつ特性)を味わうことができるようにする。

学習指導計画
第1時  ふうせんバレーボールを知ろう
第2時  ふうせんバレーボールをしてみよう
第3時  ゲームをしてみよう

【第1時】ふうせんバレーボールを知ろう
・ふうせんバレーボールが「生まれた理由」についての話を聞く。


【スライドを用いた説明】
・北九州市発祥のスポーツ
・健常者と障害者がともに参加できるスポーツ
・全国大会等も行われている

・ふうせんバレーボールのルールの説明を聞く。


【実演を用いた説明】
・最初にふうせんを1個割って,怖さを取り除く(割れることがあることを知る)
・実際にコートに入って,選手によるパス回しの示範を見る
・ポジションやセッター・アタッカー等の役割を知る

【第2時】ふうせんバレーボールをしてみよう
・ふうせんにふれてみよう。
・サーブをしてみよう。
・パスを回して相手コートに返してみよう。

・チームで輪になってパスを回す(落とさずに30回等)
・パスの種類(片手で)
〈オーバーパス〉(遠くの人へ)なるべく顔の前からパスを出す
〈アンダーパス〉(近くの人へ)お腹ぐらいのところから高く上げすぎない

【第3時】ゲームをしてみよう
・トーナメント形式のゲームを行う。

・チーム全員が1回は必ずふうせんに触る
・一人2回まで触れられるが,続けては触れられない
・ネットにふれると反則
・6回以上10回以内で相手コートに返す
・サーブ権は得点に関係なく,得点が入るごとに相手チームへ移動する

第4学年 総合的な学習の時間「だれもがかかわりあえるように」【総時間22時間】
ねらい:「だれもがかかわりあえるように」の学習展開に,パラリンピック選手との交流活動(ゴールボール体験)や英国パラリンピックCEOと交流授業を位置付けることを通して,スポーツに取り組むことによる「自分の壁を乗り越えようと挑戦する素晴らしさ」「障害者スポーツの楽しさや難しさ」「障害者スポーツを支える思いや願い」に気付くことができるようにする。

学習指導計画
総合的な学習の時間「だれもがかかわりあえるように」の単元終末段階
「パラリンピック種目を体験してみよう」
第1時  ゴールボールのゲームを見てみよう
第2時  ゴールボールを体験してみよう

【第1時】ゴールボールのゲームを見てみよう

リオパラリンピックの「日本対中国」戦を観戦する。
GTの小宮選手も出場している映像を準備し,交流への思いを高めるようにした。

【第2時】ゴールボールを体験してみよう


【競技に取り組む思いについての話
・障害と向き合っている思い
・競技との出会い
・競技に取り組む思い


【ゲームの実演と練習】

【第2時】ゴールボールを体験してみよう

【ゲーム体験】
・3対3の攻防
・3分間・
コートの広さは,実際の大きさを採用(ラインの下に紐も)


【「ゴールボール」金メダリストとの交流】
○視覚を失ったときの動きの難しさの実感
○「選手の凄さ」の実感

(英国パラリンピックCEOと交流授業)H27年度


【英国パラリンピックについての話】
・英国でのパラリンピックの様子について

【英国パラリンピックCEOへの質問による交流】
・仕事やスポーツを支える立場の思いなど


【英国パラリンピックCEOへのプレゼント(日本の文化が感じられる色紙)】

第5学年
体育科「バスケットボール」(関連的)
特別活動「車椅子バスケットボール選手を応援しよう」
ねらい:パラリンピック選手との交流活動(体験)を位置付けることを通して,スポーツに取り組むことによる
①「自分の壁を乗り越えようと挑戦する素晴らしさ」
②「障害者スポーツの楽しさや難しさ」に気付くことができるようにする。

(車椅子バスケットボール選手との交流会)

【ゲームの実演(シュートや2対2のミニゲーム)】


○競技用車椅子に乗ってのフリースロー体験
(距離を伸ばしながら,難しさを実感させる)


○子どもたちとの交流の場を設定
・質問に答えて頂きながら,現在学習しているバスケットボールとの違いを知る。

試合に臨む選手にメッセージを書き込んだ「横断幕」をプレゼントする。最後に,選手にサインをしていただき,試合会場に飾っていただいた。

(第13回北九州チャンピオンズカップ国際車椅子バスケットボール大会観戦)



実際の試合を観戦して,転倒した選手を,味方や相手関係なく車椅子を使って立たせてあげている姿を見て,フェアプレー精神の素晴らしさを感じることができていた。また,体験をしていたことで,その選手の気持ちに寄り添う感想も多く記述されていた。

第6学年
総合的な学習の時間「「つくろう!未来の計画書」
道徳「弟にナイスプレーと言えた日(夢に向かって)」(関連的)
ねらい:パラリンピック選手との交流活動(体験)や英国パラリンピック委員との交流授業を位置付けることを通して,スポーツに取り組むことによる
①「自分の壁を乗り越えようと挑戦する素晴らしさ」
②「障害者スポーツの楽しさや難しさ」
③「障害者スポーツを支える思いや願い」に気付くことができるようにする。

交流活動の事前の取組として,道徳の時間に車椅子テニスでパラリンピック出場を目指す竜太郎くんを題材にした「弟にナイスプレーと言えた日(夢に向かって)」を用いて,障害を乗り越えて努力していく姿への共感的な態度を育てる授業を位置付けた。その学習後,パラリンピック選手との交流活動(体験)や英国パラリンピック委員との交流授業を実施した。

(パラ・パワーリフティングの選手による講演と実技体験)

・ビデオ映像による競技の魅力の紹介


体験終了後,子どもたちとの交流の場を設定する。(大陸横断や登山など)

(実践上の工夫点,留意点等)
○ 子どもの実感的な理解を促すために,選手や指導者など,実際に競技やその普及に関わる人との直接的な交流を位置付ける。その際,互いに活動の意図を共通理解できるように,打ち合わせを密にする。
○ スポーツを「する(体験)」を通した学習過程を中核に据える。(教科・領域等の関連を図りながら)
○ 現在の本校のカリキュラムとの関連を図る取組を位置付ける。
○ スポーツを「する」「見る」「支える」という視点から,事前の学習を位置付け,子どもにめあてをもたせ,意識を高める。

(成果)
第3学年 体育科「みんなでつなごう ふうせんバレーボール」
実践後のアンケート結果からは,ふうせんバレーボールが「とても楽しい」「楽しい」と答えた子どもがほとんどであった。その理由からは,「みんなとパスをつなぐことが楽しい」「わかば学級の友達とも仲良く交流できた」「助け合う大切さが分かった」という感想が多く書かれていた。「ふうせん」であることが,子どもたちのプレーへの安心感を高め,「つなぐ」楽しさを短時間で味わうことができたことが伺えた。苦手な子どもにとって取り組みやすく,体育科の学習内容である落下点への移動の動きも高まる様子が伺えた。また,わかば学級の子どもたちの動きが上達する様子を見取り,よさやがんばりを認める記述も多くあったり,昼休みに自主的に遊ぶ姿が見られたりして,交流のねらいへも近づくことができたことが成果であった。

第4学年 総合的な学習の時間「だれもがかかわりあえるように」
ゲームを通して,視覚を失ったときの動きの難しさを実感し,「選手の凄さ」を感じている記述が多くあった。体験学習前に試合をビデオで観戦することで,試合のルールだけでなく,観戦するマナーについても,アナウンスを聞きながら知り,学ぶことができた。また,ゲームへの興味・関心を高めることにもつながった。体験的な活動によって感じたことを,これまでに総合的な学習の時間に学んだ点字や車椅子などの日常生活のことと結んで感想を書く子どもも多くいた。選手やパラリンピックCEOの思いに触れ,「パラリンピックを応援したい」など,スポーツを支える視点からの記述も見られた。

第5学年 特別活動「車椅子バスケットボール選手を応援しよう」
昨年度までは,バスケットボールの学習との関連から,北九州チャンピオンズカップ国際車椅子バスケットボール大会を観戦することを継続してきた。本年度は,子どもの実感的な理解を促すために,選手や指導者など,実際に競技やその普及に関わる人との直接的な交流を位置付けたことで,より選手の目線や気持ちになった見方をできるようになったことが,感想文から伺えた。特に,互いの車椅子が衝突する激しさや車椅子を操作する難しさを体感することで,プレーの凄さをより感じていることが分かった。また,横断幕をつくるなど,親しみをもって見ることで,今までよりも多くの子どもが,試合中に「助け合う」選手の姿を捉え,フェアプレー精神の素晴らしさを感じることができていた。交流会においては,グループを少人数に分け,かかわりを多くすることで,担当の選手への親しみも強くなったようであった。

第6学年 総合的な学習の時間「「つくろう!未来の計画書」
体験においては,初めて目にする種目に驚きの表情を見せていた。パラ・パワーリフティングの紹介ビデオは,迫力あり競技の盛り上がりを感じることができる内容であった。体験では,重さが異なるコースを選ぶことができるようにし,一人一人が十分にできる機会を確保できた。重さについては,実際の重さを用意できれば、選手の凄さがもう少し伝わったと考える。しかし,いろいろなことに挑戦しているエイモス氏の話を聞き,障害を乗り越えて自分の限界に挑む姿が印象に残ったことが多くの子どもの記述から伺えた。また,6月に実践を行ったが,8月のリオオリンピックだけでなく,9月のリオパラリンピックのパラ・パワーリフティングを見たという子どももおり,障害者スポーツへの興味・関心も高まってきたと感じている。

2年間の取組を通して,実際に競技やその普及に関わる人との直接的な交流を効果的に位置付けることで,子どもの実感的な理解を促すことができた。また,教科・領域との関連や事前の取組を仕組むことで,体験学習の内容をより充実させることができると感じた。かかわった教職員にとっても,障害者スポーツを理解する上でよい機会となったと感じている。
今後は,この実践を継続的に実践できるように,子どもの反応から得たことを基に,よりねらいを明確にした学習を構築していきたいと考える。

【オリンピック・パラリンピック教育の実施に伴う問題点】

・継続的に実施できる形態によるカリキュラムへの位置付けを図ること
・講師等の活用のための費用等の確保