(宮城県)国立大学法人宮教大附属幼稚園

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【目的・ねらい】

「遊び力」をはぐくむための環境構成とその援助のありかたについて実践を通して明らかにする
体の機能を十分に使って遊び,身のこなしなどを体得して,自ら体を動かすことが楽しいと感じながら遊ぶ力を「遊び力」と呼ぶ。この「遊び力」を高めるために,私たちの幼稚園では,「きもち」「体のうごき」の視点からアプローチして行くこととした。

(1)本園の実態把握 遊びの様子と運動能力や運動量の関係を探る。
・3歳児 25M走の測定
・4歳児 25M走の測定,ボール投げの測定
・5歳児 25M走の測定,ボール投げの測定,活動量計を用いての計測
※別紙参照

(2)子どもたちの遊びから「遊び力」をはぐくむための活動を検討する
・遊びを「きもち」「体のうごき」の視点に分けて捉える。
・環境構成や援助の在り方について考える。

(3)夢中になって体を動かして遊ぶための実践事例をまとめる ※別紙参照

【実践内容等】

1 好きな遊びの様子から
右の写真は,夏前のどろんこ遊び・穴掘り遊びの延長上で,年長児が園庭一面に川を作っている場面である。体幹を使ってバランスを取りながら,金属スコップを使って,掘り進め「あそこまでつなげよう」「水をもってきて」などと言いながら,友達と共通の目的をもって取り組んでいた。掘る,運ぶ,押す,流す動きに加え,道具を使うために動きを連動させるなど,体全体をダイナミックに動かして遊ぶことができた。思いっきり遊んだあとには,幼児たちの満足げな表情がうかがえた。
夢中になって遊び,楽しんだ経験は,次への遊びへと広がり,つながっていく。一つの場面は短い時間でも,長期的に繰り返し楽しむことができるのは,夢中になっているからではないかと考えた。幼児たちは,遊びの発展に即した環境作りや,教師の見通しをもった援助,友達同士のかかわりや刺激し合うことを支えとして,夢中になって遊ぶ経験を重ねていくことができた。
私たちは,この夢中になって遊ぶ姿の中で,体を動かして遊ぶ活動についてより深く考え「体を動かすことって楽しい」と感じ,達成感を得て,自ら進んで体を動かす遊びができる幼児の育成を目指してきた。
そこで,私たちは,まず,幼児自身が遊びを楽しいと感じ,満足感や充実感を得ながら友達と共同して遊びを発展させていくための,環境構成を行ってきた。幼児が自らかかわり自ら選んだ遊びの中で,より体を動かして遊ぶことができるような援助を行うことを通して,見えてきたものは,遊びのもとである「きもちを高める」ということだった。体を動かす環境が整っていても,幼児がもっとやりたいと意欲がもてないと,遊びを継続することは難しく,また,体を十分に使って遊ぶための発達段階を考えた援助が重要であることも実感した。さらに,身のこなしなどを体得することで,遊びが発展したことも明らかになった。

2 園行事から
園行事として「餅つきの会」を行った。我が国に古来から伝わる伝統調理法である杵と臼を使った餅つきを体験し,米から餅への変化を楽しむとともに,餅を食べる体験を行った。3歳児はうさぎ杵を使って,4歳児・5歳児は重さが違っても大人が使った物と同じ形での杵を使って餅をついた。杵を持ち上げたときに,バランスをとるのが難しかったようだった。初めて体験する幼児も少なくなく,貴重な経験となったと思う。様々な経験を通して,一人一人の幼児が,体を動かしながら心の中に何か芽生えてくるものを得たのではないかと考える。餅をつくときも餅を食べるときも,保護者の協力のもと,楽しく進めることができた。

(実践上の工夫点、留意点等)
・幼児がより体を動かして楽しく遊ぶことができる環境作りについて工夫してきた。
・季節の行事など,幼児がより多くの体験ができるように工夫してきた。

(成果)
「遊び力」が高まっている子どもたちから見えてきたキーワード
・安心感・心の開放
幼稚園生活に対して安心感をもって行動していることが感じられた。
・イメージの共有
友達とイメージを共有して様々な遊びを行う傾向があることが見えてきた。
・自分からコミュニケーションを図る
自分から「まぜて」と言えるなど,友達とかかわる力があるように感じた。
・意欲・集中力
遊びに対しての意欲や集中力があり一つの遊びを継続して取り組む姿が多く見られた。
・目的意識
活動量が多いからといって遊びの内容が充実しているとは言い切れない。活動量よりも目的意識をもった遊びの質を大事にしなければならない。
・興味・気付きの追求
様々な材料を使って試したり考えたりして友達と追及し,何度も挑戦しながら得た気付きを教え合うことから,遊びに夢中になることが見えてきた。
・工夫・遊びへの愛着
遊びがより楽しくなるためにはどうしたらよいのか,幼児自身が考えることが必要である。自分たちで考え決めたことは幼児自身が大事にして,楽しむことができるということがわかった。

見えてきたキーワードは,すべて子どもの「きもち」にかかわるものである。本研究から,子どもの遊び,行動,動きなど,その行為の根拠となる内面を探ることが重要であることが明らかになった。これらのことを見据えて教師が,どのように援助をしていくとよいのかを次年度以降の研究で,明確にしていきたい。

【オリンピック・パラリンピック教育の実施に伴う問題点】

・さらに幼児が体を動かすことが楽しいと感じる環境を工夫して作っていくこと
・保護者に対して,幼児期に体を動かすことの重要さについての理解を啓発すること